ジグソー法とは、学習者同士が協力し合い、教え合いながら学習を進めいていく学習方法の一つです。このジグソー法は、アクティブラーニングの実践方法の一つとして、昨今注目を集めています。今回は、そんなジグソー法について、概要から具体的な実践方法までをご紹介します。
教えること=学ぶこと
自分が学んだことを誰かに教えなければならない状況に置かれると、新しい情報を吸収する能力が高くなります。友達と一緒に勉強していて、相手に教えているうちに自分の理解が深まっていくような経験ってありますよね。実はその時に、知らず知らずにジグゾー法を実践していたのです。
相手に伝えるためには、自分の頭の中で情報をうまく整理する必要がありますね。その過程で、情報をより正確に記憶できるのです。そして、相手にそれを伝える(アウトプットする)ことで、学習した情報のなかでも特に重要な部分を自分自身が覚えることができるのです。
John Nestojko博士の研究
研究実験をひとつ紹介しましょう。この実験では、被験者を2つのグループに分け、片方のグループには覚えた情報をテストすると告げ、もう片方には覚えた情報を別の人に教えなければならないと伝えました。
実際には、どちらのグループも、覚えた情報のテストを受け、別の人に教えることはしませんでした。それでも、別の人に教えることになると思っていた被験者のほうが、テストで良い結果を出したのです。
不思議ですよね。この違いは、なぜ生まれたのでしょうか。
この研究の筆頭著者John Nestojko博士によれば、この研究結果は、学習前や学習中の被験者の心がまえ次第で、新しい情報の学習効率に大きな違いが出る可能性を示しているそうです。
「心構え」の違い。それだけの事?って思いますが、それが学習結果に違いを生むというのです。
「比較的簡単な指示を与えるだけで、被験者の心がまえを良いほうに変えることができます」とNestojko博士は説明しています。
私たちに自覚はないのですが、あとで誰かに教えなければいけない情報を覚えようとする時には、無意識のうちに、学習方法が効率的なものになる傾向があるそうです。
「分かりやすく伝えなければいけない」という意識が、「何が大切なのか」、「これらのことはどのように結びついているのか」、「なぜそうなるのか」など情報を注意深く整理していくことにつながるという事なのでしょう。そして、結果的にそれが、高い学習効果として現れるのですね。
なるほど、素晴らしい。
ひとりで勉強するときも実践できる
この方法は、一人で勉強するときにも実践できそうです。つまり、誰かに教える、または見せるつもりで、ノートに覚えたことを書きこむだけでもノートの書き方が変わるかもしれません。自分だけのノートではなく、誰かに見せて、伝えるために書くという意識を持つだけで、ポイントの強調、分かりやすさの重視などの意識が生まれ、学習効果を高めることにつながります。
ジグゾー法の具体的な手法
では、次にジグゾー法の具体的手法についてお話ししますね。ジグゾー法は以下の5段階で進めていきます。
問いの設定➡エキスパート活動➡ジグゾー活動➡クロストーク➡評価
なんだか難しそうですね。でも大丈夫。一つずつ確認していきましょう。
①問いの設定
まず、教員が問いを設定します。この問いの設定時に気を付けることは、既に知っていることや、3つか4つの知識を部品として組み合わせることで解けるものになるように設定することです。そして、その問いを解くのに必要な資料を、知識のパートごとに準備しておくのです。
②エキスパート活動
生徒、児童は、「問い」に対して一人で思いつく答えを書いておきます。
その後、同じ資料を読み合うグループを作り、その資料に書かれた内容や意味を話し合い、グループで理解を深めます。この活動をエキスパート活動と呼びます。
③ジグゾー活動
次に、違う資料を読んだ人が一人ずついる新しいグループに組み替え、さきほどのエキスパート活動で分かってきた内容を説明し合います。同時に他のメンバーから他の資料についての説明を聞き、自分が担当した資料との関連を考える中で、理解を深めていきます。理解が深まったところで、それぞれのパートの知識を組み合わせ、問いへの答えを作ります。この活動をジグソー学習と呼びます。ジグゾーパズルを埋めていくように知識を組み合わせて答えをつくっていくのですね。
④クロストーク
答えが出たら、その根拠も合わせてクラスで発表します。互いの答えと根拠を検討し、その違いを通して、一人ひとりが自分なりのまとめ方を吟味するチャンスが得られ、一人ひとりが納得する過程が生まれます。この活動をクロストークと呼びます。
⑤授業の評価
はじめに立てられた問いに再び向き合い、最後は一人で問いに対する答えを記述してみます。初めの問いと終わりの問い(同じ問い)の解答を比べ、記述の内容が深まったか、記述の分量が増えたかで、授業の評価を行います。
まとめ
従来の教師が生徒に知識を一方的に教え込む、知識詰め込み型の授業スタイルでは、生徒が受け身の学びになりやすいのが問題でした。それに対し、知識構成型ジグソー法では、生徒同士が対話を通して、主体的、協働的に問題、課題に取り組んでいくことで、学ぶべき内容が真の知識として生徒に定着することを目指します。
生徒は対話を通して互いに教え合い学び合いますが、人間は、そのように「教える」ということができるレベルになってこそ、その内容が真の知識として定着すると言えるのです。加えて、思考力、発想力、表現力、コミュニケーション力等、21世紀のグローバル社会で必要とされるさまざまな能力の育成にも効果的です。
今後の教育現場でさらに注目が高まっていくであろうジグゾー法についての記事でした。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。