横浜市立南高校附属中学校は、2012年(平成24年)に横浜市立として初めて開校した中高一貫校です。一期の入試倍率は10倍にもなる人気を集めて開校しました。
その後も生徒の潜在的能力を飛躍的に伸ばす充実した教育が評判となり、現在でも凄まじい人気と倍率が続いています。
2018年の春、一期生が大学受験にのぞみ、有力大学への合格者数を大幅に増やしたことも話題になりました。まさに、横浜市の本気の取り組みが結実した形です。今回は、この横浜市立南高校附属中学校の魅力に徹底的に迫っていきたいと思います。
横浜市立南高校附属中学校はどんな学校?
まずは基本情報として、アクセスと沿革です。
アクセス
所在地:神奈川県横浜市港南区東永谷2丁目1-1
アクセスは上大岡駅(ブルーライン、京急)からバスで10分。徒歩でも1.5Kmなので約20分。歩いている生徒も多く見かけます。上大岡駅から学校に向かって歩くときは上り坂が少々大変ですが、帰りは下りなので楽ですね。最も最寄りの上永谷駅(ブルーライン)からなら徒歩15分。こちらから歩いている生徒もたくさんいる様です。
沿革
横浜市立南高校附属中学校は県下公立高校で初めて開設された附属校として2012年に開校しました。母体は横浜市立南高校、いわゆる南校(なんこう)ですね。南高校は昭和29年に設立された伝統校です。平成3年に新校舎となり、公立の高校としては十分な設備を誇っています。横浜市から2012年に「進学重点校」としての指定も受けています。
南高附属中はこの南校の「併設型」の附属中学として2112年に開校しました。
実は当初は中等教育学校として発表されたのですが、OBや地元の強い反対があり、併設型に変更されたという経緯があります。併設型は、高校に附属中学を設置するスタイルなので、高校からの入学者との合流が大きなテーマになります。
つまり、高校からの入学者に対して考慮したカリキュラムやクラス編成を考える必要があるのです。これに対し、他の中等教育学校は高校募集を行わないので、純粋な中高一貫校として6年間を過ごすことができるという違いがあります。
中学校は4クラス、160人定員ですが、高校からは1クラス分加わり5クラス、200人になります。
南高附属中学の魅力とは?
1.進学実績
2018年春、南高附属中学一期生を含む200人の大学合格者数は大きな注目を集めました。国公立大学の合格者数が1年前の18人から62人へ激増。なんと3倍以上の伸びを見せたのです。
このうち現役での合格は59人ですから、国公立大学への現役合格率は29.5%でした。(中学からの入学者を分母として計算すればもっと高くなりますね。)
驚きはそれだけではありません。17年はゼロだった東大と東工大に5名ずつ、横浜国大は1名から一気に18名になりました。早慶・上智をはじめとする難関私立大学への合格者数も激増したのです。
この劇的な変化から「横浜市立南高附属中学の誕生によって、南校は別の学校に生まれ変わった」と言われているほどです。
詳細の進学実績は南高等学校のHPにて公開されていますので、参照してみてください。進路指導のページです。
https://www.edu.city.yokohama.lg.jp/school/hs/minami/index.cfm/1,html
2.注目の英語教育は「ラウンドシステム」
同校の合格実績を支えるポイントの一つに中学校での英語教育があります。その秘密は「ラウンドシステム」と呼ばれる特徴的な授業の中にあります。
英語の授業と言えば、教科書をはじめから終わりまで順番に学習していくのが普通ですよね。でも南高附属中学では、この従来の方法と大きく異なる手法を取っているというのです。どんな勉強のしかたなのでしょうか。
なんと、このシステムでは2~3カ月で教科書を一通り学習してしまうというのです。そして、教科書を一通り学ぶというサイクルを1年生なら5回、2~3年生は4回も繰り返すのです。もちろんただ単に同じことを反復するのではなく、段階的にステップを踏ませていくように英語力を高めていくのがポイントです。
例えば中学1年生ならば、音と文字の一致でつまずく生徒が多いですよね。だから、1回目はCD音源などで教科書の英文を何度も聞いて、ストーリーを把握するところから始まります。そして、2回目は英文を文字で追いながら英文を聞いて、音と文字を一致させていきます。その上で、3回目は音読を徹底的に行い、4回目は英文の一部を空欄にしたワークシートを使って単語や熟語を身に付けていきます。そして5回目には教科書の内容を自分の言葉で表現するトレーニングを行うのです。
「使える英語力」を身に付ける素晴らしい手法ですね。
英語力の分かりやすい指標として「英検」があります。英検は日本で最もメジャーな英語の能力をはかる検定試験の1つで、年間230万人が受けており、国立大学の学科試験免除や、入学後、単位として認定されるなど、優遇制度も整っています。
各級の目安としては、2級が高校卒業程度、準2級が高校中級程度、3級が中学卒業程度となっています。
南高附属中学の中学3年段階での取得率を見ると、まさに全国トップレベルです。相当高い英語力が身についていることが分かります。以下に取得人数を示しますが、なんと準2級以上の取得率は80%という驚異の数字です。
2級 :42人
準2級:86人
3級 :19人
このように中学の段階でしっかりした土台を作り、高校では受験を意識した授業を行うことで、学力向上につながりました。高校3年生の時のセンター試験の自己採点では、中学からの入学者の英語の平均点は200点満点中で8割を超えたというからびっくりです。
3.充実したグローバル教育
グローバル教育も充実していて、私立の学校と肩を並べるほどの豊富なラインナップです。公立の学校でこれだけたくさんの機会が与えられているのはすごいですね。生徒が希望すれば、海外研修や海外の学校との交流活動など多くの貴重な経験をすることができます。
- シンガポール海外イマージョン研修
- ベトナムイマージョン研修
- グローバルビレッジ研修
- 国際大学への国内イマージョン研修
- カナダ姉妹校国際交流活動
- 海外の学校との短期国際交流活動
- 長期留学生の受け入れ
- SGH(スーパーグローバルハイスクール指定)
4.南高附属中学の大きな特徴である「EGG (エッグ)」
南高附属中学の総合的な学習の時間の愛称は"EGG"といいます。これは南高附属中学の大きな特徴となっています。次にこのEGGをご紹介していきます。
5.EGGの3本柱(カテゴリーと目的)
EGGには3本柱があり、それらがゴールである"「豊かな心」「高い学力」を育成し、自分の力で将来を切り開く力を育てる"ことを支えています。それぞれの特色は以下の通りです。
●EGG体験
「豊かなコミュニケ―ション能力」を育成する交流体験や研修
●EGGゼミ
「課題発見・解決能力の育成」を育成する多様な言語活動、調査、研究、発表
●EGG講座
「さまざまな分野の本物に触れる」機会を通して将来の進路への興味関心を引き出す
② 構成的グループエンカウンター研修(1年生)
③ コミュニケーション研修(1年生)
④ 夏季英語集中研修(全年生)
⑤ イングリッシュキャンプ(2年生)
⑥ カナダ研修旅行(3年生)
この取り組みにより、子どもたちには、広い視野と必要なスキルが確実に身についていくのでしょう。
6.学力向上に向けた取り組み
②言語力の向上を目指し、論理的思考力・判断力・表現力を育成
③理数教育の充実
⓸土曜日や長期休業日を活用した様々なプログラム
⓹家庭学習は「私の週プラン」で計画的に行う
内部進学生と高校からの入学生を高校1年生で混合クラスにしていくことも影響していると思われますが、思考力・判断力・表現力を高め、一つ一つの学習内容を深めていく方向であるともいえます。
7.勉強と両立できる部活動
南高附属中学では、15の部活動があります。運動部では、陸上部、野球部、バレーボール部、女子バドミントン部、男子サッカー部など。文化部では、演劇部、科学部、吹奏楽部などがあります。
活動は原則として月・水・金曜日の週三日となっていますので、やっぱり学業が優先、部活動の位置づけは高くないようですね。ここは好みが分かれるところかもしれませんが、南高附属中学を志願する生徒は、部活命というよりも充実した学習環境を求めている方が多いと思いますので、勉強と両立できる環境としては良いと思います。
入学者選抜
神奈川の公立中高一貫校は適性検査によって入学者を選抜します。検査日は2月3日、合格発表は同2月10日に行われます。私立中学との併願者も多いことから、この日程は固定されています。2019年度は日曜日でしたが、予定通り実施されました。検査日程は神奈川県内の公立中高一貫校は共通で、県内・県外を含む公立中高一貫校同士、また国立中学校との併願受験はできません。
選抜方法や選抜資料の比率など
募集人数と学区、選考方法について以下にまとめます。募集人数は男女おおむね同数ですが、男子は2月3日に私立中の名門である浅野中学の入試があり、上位生は若干そちらに流れる傾向があります。女子はそのような私立中学がないので、上位生も南高附属中学を受検しに来る生徒が多数います。そのため募集人数の数字以上に女子の競争は厳しいかもしれませんね。
●募集人数:男女160名(男女おおむね 各80名)
●学区:横浜市内全域 ※学区外は募集定員の30%の範囲内
●選考方法:選考資料は調査書と適性検査、1次選考と2次選考で合格者を決定する。
詳しい選考方法は以下の通りです。少し細かいですが、大切な情報です。受検は1回ですが、選考は2段階に行われています。この辺りの仕組みは公立高校入試の選考方法とよく似ていますね。
【1次選考の方法】
・A値:調査書=小学校5・6年生の8教科の評定を使用。
※評定3→10点、評定2→5点、評定1→1点とし、計160点満点で点数化
・B値:適性検査Ⅰ・Ⅱによる評価を各200点満点 計400点満点で点数化する
・S値:A値とB値を1:3の割合で合計し、S値を算出する
※S値=A値÷160×100×1+B値÷400×100×3
・S値の上位から男女各70名の合格者を決定する。
【2次選考の方法】
1次選考の合格者以外からB値上位順に男女まとめて20名を選考する
2次選考では、適性検査結果のみで選考されます。調査書は資料にならないのですね。
適性検査内容と対策のポイント
適性検査Ⅰは、3000字を超える複数の説明文の要約と意見文作成、及び資料の読み取りの出題です。適性検査Ⅱは、図形や整数などの算数の重要単元や、理科の実験や観察に関する問題が多く出題されます。
理系の学習では算数・理科の基本事項の定着と、図形や整数の性質、実験・観察などの頻出問題への対応力がポイントです。
また、文系の学習では複雑な手順で解く問題の解法や、説明文の要約及び意見文作成のスキル習得が大切ですね。
まとめ
市立の中高一貫校で、国公立大に50人以上が合格するなどの実績を挙げたことだけではなく、高校受験をせずに6年間を通して質の高い授業を受けられること、EGG体験やグローバル教育など充実したプログラムを受けられること、豊かな人間力を磨くことができることなど、総合的な魅力が非常に多い学校だと感じました。今後も人気を集めることになることは間違いありませんね。
未来を創る子供たちの学習環境が高まるのは喜ばしいことですから、このように魅力的な公立高校が今後も増えていくことを期待したいと思います。
また、同じ横浜の中高一貫校として人気の横浜サイエンスフロンティアの記事もご紹介させていただきます。
横浜サイエンスフロンティア中学の7つの魅力 - in my life
では、今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
※ 記事内の情報の正確さには万全の注意を払っていますが、誤りがないことを保証するものではありません。学校主催の説明会やHP等で常に最新の情報を確認してください。