頑張って勉強するよりも寝ている方が成績が上がるという驚きの事実、信じられますか?「おいおい、うそだろ」って思いますよね。そんな楽な方法が本当にあるのでしょうか。にわかには信じられないですよね。でも本当なのです。眠るという行為は、学習に良い結果を与えてくれるのです。今回は、その辺りを掘り下げてまとめてみたいと思います。
スイス国立科学財団(SNSF)の実験
スイス国立科学財団(SNSF)が行った、オランダ語の単語学習実験がそれを証明しています。まず、その実験について紹介しますね。
実験は学生60人で行いました。午後10時、全員に初めて聞くオランダ語の単語を学んでもらいます。
次に、そのうち30人は仮眠室で仮眠をとり、学んだ単語の録音を流しておきます。残りの30人はそのまま学習室に残り、同じように学んだ単語の録音を聞いてもらいます。
つまり、学習後に眠っていた30人と、引き続き学習室で学習していたグループに分けたのですね。さて、どちらが成績が良かったのでしょうか?
午前2時に仮眠をとっていた学生は起こされて、60人全員でオランダ語の単語テストを行いました。
注目のその結果は、なんと!仮眠していた30人の方が成績が良かったのです。驚きですよね。
これが睡眠学習の効果なのです。
寝てただけなのに、なぜ起きて録音を聞いていた学生より成績が良いのでしょうか?
この謎を解くためにまず、人間が記憶するときの脳の働きについて理解する必要があります。
寝ていた方ががいいなんて不思議だな。僕はテスト前は寝ないで必死に勉強していたけど、間違っていたのかな。
眠らないと記憶は定着しない
テストの直前に夜更かしして丸暗記した知識は、テストが終わってすぐに忘れてしまいます。そんな経験をしたことはありませんか?
つまり、一睡もせずに詰めこんだ情報は、すぐ脳から消えてしまうのです。
なぜなのでしょう?
人間は睡眠に入るとまず深い眠りに入ります。この深い眠りをノンレム睡眠といい、逆に浅い眠りをレム睡眠といいます。ノンレム睡眠とレム睡眠の周期は約90分で、これを1番で4~5回繰り返します。また、体を休めるレム睡眠のときには脳は活発に働いているので、夢を見るのはこのレム睡眠のときだということがわかっています。
そして、人間は夢を見ている間に記憶の整理を行っているのです。夢を見ているときは、レム睡眠のときですが、ぼーっと眠っているのではないのですね。
確かに、一夜漬けで頑張って勉強しても、その知識はすぐに忘れてしまうのよね。眠ることがこんなに大切だとは、思ったこともなかったわ。
ところで、夢とはいったい何なのでしょうか?
人はたった一晩でも膨大な夢を見ます。夢とは、脳にある情報や記憶の断片が、あれこれと組み合わされて作られるものです。ですから、全く知らない人が出てきたり、考えたこともないような出来事が起こったるするような夢はないのです。
また、夢のシーンのほとんどは目覚めた後には忘れてしまっていますよね。「僕はあまり夢は見ないんだ」という人もいますが、恐らく忘れてしまっているだけなのです。
時々、怖い夢を見たときなんかに覚えているときがあるけど、あれは夢の内容がすごく印象的だったからなんだね。
海馬は夢を見ているときに活動する
ここまでの話しで、脳は眠っている間に記憶の整理をするってことは分かってもらえたでしょうか。それで、ここからが大切なんだけど、その鍵を握っているのが、脳の中の「海馬」という部分です。夢を見ている間、海馬はとてもさかんに活動しているのです。
つまり、夢を見るということは、海馬が吟味しているということです。脳にある情報や記憶を夢という形で再生しながら、重要か、重要ではないか、ということを判断して、長期記憶として残す情報を選択しているのです。
したがって、寝ないということは、海馬に情報を整理し選択する余地を与えないことになってしまいますね。だから、寝ないで頭に詰め込んだ知識は、結局廃棄されてしまうのです。徹夜の勉強に意味がないのは、このような理由です。
スイス国立科学財団(SNSF)が行った実験で、仮眠をとったグループの方が成績が良かったのは、眠っている間にしっかりと記憶が定着したからなんですね。
まとめ
こうしてみると、寝ることは、覚えたことをしっかりと保つための大切な行為であると言えそうです。「テスト直前しか勉強しない。毎日徹夜だ」という人がいますが、睡眠を削ってしまっては、学力が積み上がっていくはずがありませんね。記憶は、脳に長く留まってはじめて意味のあるものです。一夜漬けしてテストでいい点を取っても、その場しのぎにすぎません。貴重な睡眠時間を減らしてまでよい成績をとろうと試みるのは、長期的には無意味なのですね。だから、睡眠も考慮した 計画的な学習プランをしっかりと立てたいものです。根性だけの一夜漬けは効果がない勉強法なのですよ。